Citizenship for Childrenが目指すもの

 

市民の想いを
社会の力に変える

本プログラムが目指すのは、子どもの日常に関わる人たちの市民性の醸成・エンパワメントを通じて、さまざまな背景を有する子どもたちに対して柔軟で主体的なアクションが生まれる土壌づくりです。

子どもたちの声に耳を傾けながら、豊かな関係性や温かいまなざしを子どもたちの周りに広げていくこと。そのために、地域や社会の中に潜在する「自分にできることで子どもや地域・社会と関わりたい」という想いを社会の力に変えていく。それがCforC の取り組みです。

自分なりの市民性を

探求し、
発揮する

本プログラムで行うのは、いわゆる支援職や専門職の養成ではありません。一人の人であり市民である自分を客観視すること。子どものためだけでも自分のためだけでもない、その両者を大切にするとはどういうことかを問う視点をもった上で、具体的なアクションを起こすこと。そして、答えを求めるのではなく、学び続け、問い続ける姿勢を持つこと。そのような市民、また市民によるアクションが子どもの生活する日常の中に生まれ続けていくことを目指しています。

「子どものための支援」から、
「私たちのWell-being」へ。

子どもたちの心の孤立を防ぐために必要なのは、専門的な知識やスキルだけではありません。誰かのことを気にかけたり、想像したり、自分にできることを考えたり、まなざしを向けてみたり。私たちは、誰もが一人ひとり、そんなふうにして自分や誰かを暖めることができる灯火のようなものを持っています。ですがその灯火も、一方的な思いや都合で「子どものために」と振りかざしてしまっては、かえって相手を傷つけ孤立させてしまうかもしれません。

だからこそ、一人ひとりの中にある「心の灯火」=「市民性」を起点に、単に子どもを支援するのではなく、子どもとともに「私たちにとってのwell-being」を目指しています。

実施背景:
子どもが孤立してしまう構造的な課題

子どもの心の孤立とは、安全に頼れる誰かがいない環境で、他者や社会への信頼を失っていく状態です。
その背景として、いわゆる支援機関や学校など、子どもをサポートする主な担い手の逼迫化があります。例えば都内の児童相談所では、一人のワーカーが100人以上の子どもを担当している状況が生じていたり、不登校や発達障害、養育の難しい家庭が利用する児童精神科の病院では、初診までに3か月~6か月を要するという状況も常態化しているのが現状です。


実施目的:
子どもたちが生きる地域に信頼できる大人を増やす

子どもの育ちにとって大切な、信頼できる他者の存在。
たとえ心に小さなケガをしたとしても、その傷口が広がる前に癒し合える仲間の存在。
そんな存在が地域や社会の中に生まれ続けていくための仕組みや文化を築いていくことが必要ではないか。そのような社会背景や課題意識を受けて、PIECESでは2016年から、本プログラムの前身である「コミュニティユースワーカー育成プログラム」をスタートしました。約3年間、4期にわたり東京都内でプログラムを実施したのち、2019年より「Citizenship for Children」に名称を変更し、茨城県水戸地域での取組を皮切りに、プログラムの全国展開をオンラインで進めています。

私たちの考える市民性とは

子どもたちをはじめ、誰もが孤立することなくwell-beingでいられる社会。そのような社会を目指すとき、不可欠となるのが「市民性」だと考えています。

PIECESではこの市民性という概念を、「私たちの周りを豊かにできるのは、私たち自身の力なんだと思えていること」だと捉えています。誰かや何かのことを想像し、関わりを持つ中で、影響を与えたり与えられたりしていく。その積み重ねを通して、自分の手元から小さく社会が変化していく実感が持てると、また誰かのために動こうと思うことができ、自分自身の豊かさにもつながっていく。市民性が醸成されることで、そのような循環が生まれていきます。

いま私たちの生きる社会では、様々な課題が複雑に絡み合っているため、唯一無二の解決策はありません。それどころか、1つの解決策に臨む過程で、他のところに歪みや綻びが生じることも起きています。だからこそ、誰かや何かに責任を求めるだけでなく、一人ひとりが生きる一瞬一瞬のなかで、自分たちの手元から社会に関わっていこうと思えることが大切なはずです。

市民性を持ち、それを発揮していく過程では、いろんな立場の人の利害や正義、価値観を受け止めていく必要があります。それは決して簡単なことではなく、葛藤や緊張が生まれます。それでも、安易な正解探しに走らず、複雑さやあいまいさとともにあること。誰かや何かを一方的に切り捨てたり、自分とは違う価値観から目を背けることなく、内省と対話を続けていくこと。それが市民として生きることなのではないかと。

一人ひとりの根源にある願いや欲求を源泉とし、私だけでもあなただけでもなく、私たちにとって大切なことは何かを想像し、行動する。市民性が醸成された社会では、そのような営みが私たちの周りの至る所で生まれるのだと信じています。